はじまりの詩・3

タンブリン砦攻略、アンジール失踪から一月が経った。
その日、レンガはラザード統括に呼び出され、任務を受けていた。

「(失踪したスタッフとバノーラ村の調査…。確かバノーラ村はジェネシスとアンジールの故郷だったはず)」

そんなことを考えながら、調査に赴くもう一人のメンバーが来るまで、レンガはブリーフィングルームの椅子に座ってくるくるしていた。
と、そこへバタバタと慌ただしく誰かが入ってくる。

「アンジールから何か!?」

黒髪を揺らしたソルジャー、ザックスだった。
アンジールが失踪してから彼はずっとイライラしていたらしく、口調に苛立ちと焦りがにじみ出ていた。

「…ねぇ、ツォン」
「何だ」

ラザードとアンジールについて何か話し合っているザックスを見つめつつ、レンガは隣に立つタークスのツォンに呟いた。
ツォンも律儀に返事を返す。

「いくら神羅関係の村とはいえ、ソルジャー二人もいらないよね?ぼくが行く必要全く無いよね?」
「念のため、だそうだ」
「念のためって…。ただでさえ人材不足気味なのにいいのか神羅…」

確かに、たかが村一つの調査の為に、ソルジャー、しかも1stと2ndが派遣されるというのはおかしい。
ジェネシスかアンジールがいる可能性があるからだろうな、とレンガは勝手に自己完結した。

「彼らが同行する」

いつの間にか話し終えたのか、ラザードの言葉にツォンが一歩前に出、ザックスに自己紹介した。

「タークスのツォンだ」
「…これ、なんか暗ーい任務?」

げんなり、とした顔をし、声のトーンまで低くしたザックスに小さく吹き出して、レンガも前に出た。

「ぼくもいるから、そこまで暗い任務じゃないと思うよ。…多分」
「多分て何だよ多分って。…って、アンタ…」

レンガの多分発言につい突っ込んでしまったザックスは、話しかけた相手が誰なのか気が付いた。

「ちゃんと話すのは初めて、かなぁ?ぼくはソルジャー・クラス1st、レンガ」
「クラス1st!?アンタが!?」

にっこり微笑んだレンガを見て、ザックスは明らかに驚いていた。
確かに、レンガは外見はどこからどう見ても子供だ。まぁ実年齢も子供だが、精神年齢的には大人なのでよしとする。

「(…身長が極端に低いだけだよな)」

勝手にザックスは思いこむことにした。

 

バノーラ村へ向かうヘリの中、ザックスとレンガはすっかり仲良くなっていた。

「えぇ!?単純に背が小さいだけだと思ってたら、マジで子供なのかよ?」
「まぁ、確かに10歳って言ったら子供なんだろうけど、兄さんたちが苦労かけるせいでぼくの方が兄みたいな気分だよ…いつも」
「…苦労、してんだな」
「…まぁね」

はぁ、とため息をついたレンガの小さな肩を、ザックスはぽんぽんと叩いた。
ため息つくの、今日でこれで何回目だろう…などと思いながら、心なしか可哀想な子を見る目でレンガを見ていたザックスに視線を移す。

「そういえば、レンガには兄貴がいるんだな」
「うん、ザックスも知ってるはずだよ?」
「え?」

会った覚えのないザックスは首を傾げた。

「会ったよね、タンブリン砦で」
「えぇ??」

?マークを盛大に浮かべて首を捻っているザックスが面白くて、レンガはクスクスと笑った。

「ほら、ぼくの髪。気づかない?」
「ん~…?…あっ!!」

長い銀色の髪を指でつまんで揺らすと、ザックスはしばらく考え込んで声をあげた。
考え込む時点で、ザックスは鈍すぎる、とレンガは脳内でふせんを貼った。

「まさか、セフィロスの!?」
「せいか~い♪」

楽しげに正解と答えたレンガとは裏腹に、ザックスはレンガが英雄の弟だと知ってしどろもどろしていた。
その姿もおかしくて、レンガはまた笑う。

「あはは、ザックス動き面白い!」
「いや、だって…え!?マジで?」
「うん、マジで」

楽しげにしている二人を見つつ、何か言いたげにツォンはひとつ咳払いをした。
ツォンの咳払いを聞き取り、二人はツォンへと向き直る。

「楽しそうなところを悪いが…もうすぐ目的地に着くぞ」
「えっ、マジで!?やっべ!」

目的地に着くと聞いて、ザックスは慌てて何故かヘリの中でいくらか広げられた荷物(といっても少量だが)を片づけ始める。
レンガはというと、荷物はすっきりまとめられたままで、自分の得物のダガーナイフに刃こぼれがないか点検していた。
年齢を交換した方が中身に合ってるんじゃないかと、心の底から思ったツォンだった。

 

 後書き
…あっれー?
下書き時点で、ルーズリーフ三行くらいだったはずのヘリのシーンが加筆により膨れやがりました。
ていうかこんだけ時間かけといてストーリー進むの遅っ!!すいません。
次こそバノーラです。あれとかこれとかそれとか多分出ます。(多分かい)

by氷紅