セフィロス、レンガの2人はソルジャーたちを連れてタンブリン砦に来ていた。
目的はタンブリン砦の占拠。
失踪したジェネシスとソルジャーたちの穴埋めをするため、クラス1stがこぞって駆り出されていた。
「…ジェネシスがあの時変だったのは、脱走の計画をしてたからかな…?」
レンガはぽつりと呟いた。
悲しげに俯いたレンガを見て少しだけ、セフィロスは顔をしかめた。
「今はそれを考えても仕方がない。俺達の爆発が合図でアンジール達が突入する。さっさとする事を済ませるぞ」
「…うん」
セフィロス率いるB隊の仕掛けた爆弾が爆発し、砦内は騒然となった。
砦内が混乱しているうちに、アンジールたちが突入して砦の中のウータイ兵たちをさらに引っかき回しているようだ。
爆弾を仕掛けた後、すばやく茂みに隠れつつ、レンガはセフィロスに問いかけた。
「ぼくたちはこれで用済み…かな。これからどうするの?」
「追ってくるウータイ兵を始末しつつ撤退だ」
「りょーかいっ」
先程の悲しそうな様子が嘘のように消え失せ、レンガは元気よく返事をして小さく立ち上がる。
同時に、ついてきているソルジャー達に撤退の指示を出した。
セフィロスは背にした、騒ぎの収まらないタンブリン砦を一瞥し、撤退を始めたソルジャーたちの元へ戻っていった。
ウータイ兵を始末しつつ、セフィロス達が撤退していると、道脇から明らかにウータイ兵とは異なる出で立ちをした者たちが現れた。
ヘルメットをかぶり、赤を基調とした服を着たその者達は、唐突に手にしたダガーで襲いかかってくる。
2nd、3rdが慌てて武器を構えた瞬間、セフィロスは相手を一掃していた。
レンガといえば、ニコニコしながらその様子を眺めていた。
セフィロスが確実に全員仕留めたと確認すると顔をひきしめ、その場に倒れているヘルメットの者へ歩み寄る。
「…この人達、どう見てもウータイ兵じゃないよね」
「そうだな」
レンガの疑問にセフィロスは淡々と応え、ヘルメットを引きはがした。そこに倒れていたのは―――
「うわっ、ジェネシス!?」
レンガが驚くのにも構わず、セフィロスはもう一人のヘルメットも引きはがした。
「うーわー…ジェネシスが二人とか三人とか、きもっ」
「…友人に対する台詞じゃないと思うが」
明らかに本音を漏らしたレンガに、セフィロスは苦笑するしかなかった。
「ジェネシス・コピー、だな」
「ホランダーが研究してた…」
プロジェクト、と言いかけて、レンガとセフィロスは遠くで「何か」が咆哮する声を聞いた。
「…!これってイフリートの…っ!!って、兄さんちょっと!?」
レンガが呟くと同時に、セフィロスは駈け出していた。
勝手にいなくなったセフィロスに、レンガは少しだけ呆れると同時に怒る。
「あぁ、もう!兄さんこういう時ばっかり勝手に動くんだから!…2nd、3rdはまとまって拠点に戻り、待機。ぼくはサー・セフィロスを追う」
「イエス・サー!」
2nd、3rdがしっかり敬礼して指示を聞いたのを確認すると、レンガもセフィロスを追って走り出した。
レンガは身体が小さい分、まともに敵とやり合えば力負けする。
だから、スピードで攪乱して戦う戦法をよく使う。
だからか、レンガの足の速さはソルジャー1といっても過言ではない。
その足をフル活用して、レンガはセフィロスを追う。
その先は少し開けた場所になっていた。だが、セフィロスの姿はない。
代わりに…
「…あれ、空間歪んでる。異空間で誰か戦ってる…」
広場の中央付近だけ少し空間が歪んでおり、召喚獣と誰かが異空間で戦っていることを示していた。
だが、すぐに歪んだ空間がさらに歪み、その場に二人の男が現れた。
「あっ、兄さん!こう言う時ばっかりなんでいなくなるの!2ndや3rdに迷惑かけちゃうだけでしょ?一言言うだけでもいいのに」
「…すまない」
端から見たら、英雄が10歳児に説教されているこの図はさぞ不可解だろう。
状況の理解に苦しんだのか、空気を変えるようにセフィロスと共に現れた黒髪のソルジャーが足下に転がっていたジェネシス・コピーのヘルメットを外した。
「…ジェネシス」
「脱走したソルジャー・クラス1st!?」
「ううん、本人じゃないよ。ジェネシス・コピー」
「コピー!?人間のコピー?」
レンガの発言に理解の範疇を超えていたのか、黒髪のソルジャーはオウム返しに聞いた。
そんな青年を尻目に、セフィロスは淡々と問いかけた。
「アンジールはどこだ?」
「ここで戦ってたはずなんだけど…」
「(…あぁ、そうか、この2ndがアンジールが言ってた…確か、ザックス・フェアとかいう…)」
おそまきながら、レンガは彼の正体に気づいた。いつもアンジールが楽しげに語っていた弟子的存在。
「(…確かに、子犬だね)」
レンガが小さく笑いを零している間にも、セフィロスとザックスの会話は続く。
「アイツも行ったか」
「あ?今の、どういう意味だよ!」
セフィロスが呟いた言葉にすばやく反応し、ザックスは叫び気味に言う。
「アンジールも裏切り者になった。そういう意味だ」
歩き出しながら、セフィロスは冷たく返した。
レンガは友人に対してかなり冷たい態度を取ったセフィロスに疑問を抱きつつも、その後を追うように歩き出す。
その姿を見たのもあってか、ザックスは憤慨した。
「ありえない!俺、アンジールのことはよく知ってるんだ!そんなことする男じゃない!」
ザックスの叫びに歩みを止めて、セフィロスは静かに、レンガは少し驚いたように振り返る。
「アンジールは、俺を裏切ったりしない!」
「(…アンジール、いい弟子をもったね。兄さんなら弟子を取るなんて絶対無理だよね)」
「(…弟子なんてものはいらん。とるならお前がとれ)」
後書き
はじまりの詩、久々の更新です。
いやー、こうして書いてると、本編ストーリーは出来るだけ壊さず、オリキャラも混ぜるってすごいめんどくさいですね。
でも楽しいです。
CCプレイし直してますが、ニブルヘイムがどうしても進めません。
先を知ってるから悲しすぎる…。
でもニブルヘイム書くのが楽しみでしょうがないです。
ではここまで読んで下さりありがとうございました。
by氷紅