Couldn't change Destiney 1

その日、セフィロスに剣の師匠がつくことになった。
まだ幼くも、既にソルジャー並の戦闘能力を持つセフィロスに、師事出来るような人材は神羅にはいない。
外部から、今のセフィロス以上の腕を持つ人間を、神羅は雇えたらしい。
今、セフィロスはその師匠となる人物に会うために、トレーニングルームを訪れていた。
まだ到着していないのか、トレーニングルームにそのような姿は見えない。

「……」

何もないトレーニングルームに立ち尽くし、セフィロスはただただ待ち続ける。
しばらくすると、ふたつの人影がトレーニングルームへするりと入ってきた。

ひとりは、赤銅色の髪と瞳の、きつそうな印象を受ける女。
もうひとりは、若草色の髪に紫色の瞳をした、完璧に無表情な男。
どちらも、戦う者独特の鋭い空気を身に纏っていた。

入ってきた女は、トレーニングルームを軽く見回してセフィロスを視界に入れる。
驚いて軽く目を見開いた。

「神羅は子供まで使うようになったの?」
「……子供じゃない、セフィロスだ」

呆れたように女はため息をつく。
呆れた相手はセフィロスではなく、神羅に対してだ。
見下ろせる小さな手に向かって、女は手を差し出す。

「リタースクよ。リタでいいわ。あっちの無愛想はローク。よろしく」
「……よろしく」

ロークに劣らぬ無感情っぷりに、リタは感服する。
それでも手を取ってくれたセフィロスに向かって、リタはにこりと笑った。

「さて、じゃあさっそく始めましょうか。ロークが先に相手するから」

リタが視線を向けると、ロークはいつの間にか自身の得物を構えていた。
かなり長い大剣。ぱっと見ても、相当重いことがわかる。
それを片手で軽々と持ち、構えている。

「……武器を取れ。受けろ。流せ。俺に当てろ」
「本気でやらなきゃ、ロークには当てられないわよ」

ロークの簡潔な言葉に、セフィロスは眉を寄せる。
それに続いたリタのセリフで、セフィロスは訓練用の剣を構えた。

「……行くぞ」

その一言で、充分だった。
次の瞬間、セフィロスは床に叩きつけられていた。
知らぬ間に床に大の字になっていて、セフィロスは目を瞬かせる。
事態が、理解できなかった。

「あら、やられちゃった?じゃあロークとやり合うのはまだ早いわね」

大したことではない、とでも言うようにさらりと言われ、セフィロスは慌てて身体を起こした。

「今の……っ!」
「だから、言ったでしょう?本気でやらなきゃって。ま、受け止めることも出来なかったんだから、しばらくは私が相手ね」

片手で持ち上げられるとはいえ、あれだけ巨大な剣を持っていればスピードは期待できない。
だからこそ、セフィロスは最初、様子見をしようと思っていたのだ。
なのに……この様だ。

「私の銃が完璧に避けられるようになれば、ロークの太刀筋も見えるようになるわ。それまではひたすら避ける訓練ね」

いつの間にかホルスターから銃を抜いて弄んでいたリタは、にやりと質の悪そうな笑みを浮かべる。
ロークは、その大剣をいつの間にか元の位置へ戻していた。
リタの銃が、正確にセフィロスを狙う。

「安心なさい。詰めてあるのはゴム弾よ。当たっても痛いだけ」

それから3時間、セフィロスはリタの銃弾に追われ続けた。

  →

 

あとがき
えー……セフィロスを負かしたかっただけです。
あれだけ本編で最強なので、子供の頃は弱くてもいいなと思って。
ちなみにロークが使っている剣は、DODの鉄塊Level.4だと思ってくださいwww
あれ、45キロあるんでしたっけ?自分で書いといてあれだけど、それを片手で扱うロークって……。

20100926 氷紅