きもだめし、はじめました。2

「喰われる……だと?」
「……命がおしいなら、帰ったほうがいいって。あれはいきてるものじゃないって」

しん、と四人は静まり返った。
霊の話を伝えたレンガの視線だけが、未だに何かを追うようにさまよっている。

「他になにかない?……うん、それはわかってるよ。だいじょうぶ。
……食べられたひとはどうなるの?……わかんないよね、ごめんね」

どこかへ向かってぺこりと頭を下げるレンガ。
ジェネシスはさりげなくアンジールを盾にして立っていた。
セフィロスは青い顔をしているものの、兄としての威厳は保っていたいのか、レンガの傍にずっといる。
ザックスだけが、能天気にきょろきょろと辺りを見回していた。

「……レンガ、話している相手は誰なんだ?」
「え?えーっと……あ、そうなんだ……」

セフィロスに聞かれ、困ったようにレンガは振り返り、見えない誰かに視線で問いかける。
その誰かが答えたようで、レンガは少しだけ眉を寄せた。

「……もういい。先へ行こう」
「え……だって、先にいっちゃだめだって……」
「そう言われてもな……仔犬はやる気だぞ」

ザックスはこれ以上無いほど爽やかにスクワットをしていた。
他の四人はじっとりとザックスを見る。

「……しょうがない、行くか」

アンジールの一声で、五人はぞろぞろと奥へと進んでいった。
レンガだけが途中で立ち止まり、申し訳なさそうに振り返る。

『止められなかったな……』
「……ごめんね。せっかく忠告してくれたのに」
『いや、ここに来るものは大体そうだ。そして死んでいってしまう。私が見えない人がほとんどだしな……』
「……ごめんなさい」

再びレンガは、幽霊となっていた研究者の男へと頭を下げた。
研究者の男は慌てて手を振る。

『いやいや、いいんだよ。久々に他人と話せて私も良かった。……こんな状況でなければね。
それはそうと、君達はソルジャーなのかい?』
「え?うん、そうだよ。黒い髪の人がクラス・2ndで、のこりは全員1st」
『まさか……君も?』
「うん。去年から」
『……そうか……』

研究者の男はふっとレンガの頭を撫でる。
もちろん、死んでいるので触れることは出来ないが、レンガは不思議そうに男を見上げた。

『ソルジャーなら多少は安心出来る。しかし、やっぱりアレは化物だ。充分気をつけてくれ』
「うん、わかった。気をつけるね」
「レンガぁー!置いてくぞー!」
「今行くー!……それじゃあ、ありがとうございました」

ぺこり、と三度目のお辞儀をして、レンガは手を振っているザックスへと走っていった。
その後ろ姿を見つめながら、男はぽつりと呟く。

『……あの子もまた、プロジェクトの被害者か。プロジェクトの被害者同士が潰し合う……これも、私たちの罪なのだろうな』

すうっと、男は空気に溶けて消えていった。

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なかがき
ソルジャーズ三人の口調が書き分けられなくてよくわからん。
ザックスを仔犬呼び→ジェネシス
わりと普通に会話してる→アンジール
けっこうびくってる→セフィロス
馬鹿→ザックス
子供→レンガ
で判断してください。