祗沙の首都、藍閃。
その一角にある宿で、コノエは尻尾を揺らしながらイスに腰掛けていた。
どこか不機嫌そうな表情を浮かべ、料理を運ぶバルドと正面に座るライを見据えている。
コノエの視線を意にも介さず、ライは静かに座ったままだ。
「……俺、トキノの所に行ってくる」
「ここにいろ」
「……」
眉間の皺をさらに深くして、コノエは平然としているライを睨みつけた。
気まずい空気を払拭するように、バルドが間に割って入る。
「まぁまぁ、あんまり気にするな、コノエ。これ食え」
ごとっと重い音を立てて、コノエの目の前に料理を乗せた皿が置かれる。
コノエは不機嫌そうな顔のままでバルドを見上げたが、見るからに美味しそうな料理を前にして
ぐぎゅる~とコノエの腹の虫が鳴った。
「……」
「遠慮するな、食え食え」
ごくりと喉を鳴らし、コノエは皿の料理に手を伸ばす。
わざわざコノエのために作ってくれたのだろう。
コノエの好物であるクイムの実がふんだんに使われていた。
クイムをかじっていると、ライがふっと鼻で笑う。
「なんだよ!」
「何も無いが?」
ライに対する苛立ちをぶつけるように、コノエはクイムの実をがじがじとかじる。
かじりながら、別にライの言うことを聞く必要はないことに気づいた。
「……別に、俺がライの言うことを聞く必要はないよな」
ぽつりと呟いたコノエに、ライの白い耳がぴくりと反応する。
先程まで揺れていた、コノエの尻尾がいつの間にか静止している。
皿に山と盛られていたクイム料理は、ほとんど姿を消している。
コノエは空になった皿を厨房に返し、厨房で料理をしていたバルドにそっと耳打ちした。
「バルド、俺出かけるから裏口通らせてくれ」
「あぁ……いいぞ、静かに行け」
「ありがとう」
出る前に、コノエは食堂をちらりと覗いた。
ライはふさふさの尻尾を揺らして、自分の目の前でほかほかと湯気を立てているスープを見つめている。
ライに見つかる前に、そそくさとコノエは裏口から外へ出た。
あとがき
続くかどうかはわかりません。
ラメントの話が書きたかっただけの話です。要するにただの自己満足です。
このあと、コノエはトキノと談笑してきます。
ライはコノエがいないことに気づいてバルドを問い詰めます。
とりあえず、尻尾と耳の表現ができたので満足です。私は。
続きが読みたい方はメルフォや拍手で教えていただければ、書くかもしれません。
20100811
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