君が居ない世界なんて

「うわぁぁあぁぁあ……!!ミーシャ!!ミーシャぁぁぁあああ……!」

幼い頃に離れ離れとなってしまった、双子の妹を探して幾千里。
エレフセウスが再び妹と相見えた時、彼女は神に捧げられた後だった。
水底に映る青白いアルテミシアの姿は、成長こそしていたが昔の面影を残している。
水中に沈み、もはや生存は不可能であろうとエレフセウスが泣き崩れたとき、彼にしか聞こえない声が響く。

『ドゥダ、ェレフ。運命トハ、残酷ナモノダロゥ?』
「黙れ……」
『ォ前ガ探シ求メタ娘ハ、神ニ捧ゲラレテシマッタ』
「黙れッ!」

エレフセウスは拳を地面に叩きつける。
声の主は、押し殺した笑いをくつくつと上げた。
未だ涙の跡が光る顔で、エレフセウスは水底の妹へと語りかける。

「ミーシャ……ミーシャに会うために、俺は生きてきたのに……」

呆然と呟くエレフセウスの横を、大きな黒い影がすり抜ける。

『フム、ェレフ。ォ前ハΘノ器ダガ、ァノ娘ハ母上ノ器ノヨゥダナ』
「なんだと!?」

バッと顔を上げて、エレフセウスは自らの横に立つ影を見上げる。
自分にとり憑く死の神。
冥界の王が母と呼ぶのはただ一柱。
すべての始まりの神。少女の姿とも、老婆の姿ともされる運命の女神……Moira。

「……ミーシャを殺したのは……アルカディアと……ミラ……?」
『恐ラクナ』

エレフセウスの瞳に炎が宿ったのを見て取って、冥王は笑みを浮かべた。
そんな冥王の様子には気づかず、エレフセウスは立ち上がって妹へと微笑む。

「ミーシャ、仇は討つから。……おやすみ」
(エレフ……待って……母さんたちを……私を/女神を 殺さないで……)

エレフセウスは、奪われた愛する者の為に復讐の黒き刃を取る。
緋色の風車を影に背負う少年のように……
遠き異世界から来たりし騎士のように……

君がない世界なんて

僕には何の価値もないから、君の代わりに復讐を愛そう……。

 

あとがき
あっはー♪本格的にわけわからんくなってきたぞ!←
エレフはタナ様の器で、ミーシャはミラの器だとミラコンのDVDを見た限りそんな見解の私。
サンホラワールドで、黒き刃の剣って復讐の象徴だと思うんですよ。
エレフしかり、サンしかり。異世界の騎士は知りませんが。

20100829

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