冷たい頬をなぞって
彼は、暖かかった。声も、笑顔も、優しさも、素直さも、そうだ、存在が暖かかったんだ。

「ティーダ?」

名前を呼んだ。返事はない。
無視しないでよ、寂しいじゃんか。
いつもは呼ばなくても飛び付いてくるくせに、こういうときだけおとなしいなんてお前らしくないよ。

「ティーダ、」

笑いかけてみた。笑顔はない。
笑ってよ、虚しいじゃんか。
いつもは俺の笑顔見たいって言うくせに、そういうお前が笑わないなんて変な感じだよ。

「ティーダ・・・」

優しく抱きしめてみた。抱き返してくれない。
抱きしめてよ、物足りないじゃんか。
いつもは強く抱きしめてくれるくせに、こういうときこそ近くに感じてたいんだよ。

「ティーダ、好きだよ。」

素直に言ってみた。答えてくれない。
俺もだよ、って言ってよ、切ないじゃんか。
いつもは愛してる、って囁いてくれるくせに、やっとお前の顔見て言えたんだから答えてよ。

握り返してくれない手。彼は眠っている。
手をかざしても感じられない息。彼は呼吸していない。
耳を押し当てても聞こえない心音。彼の心臓は動いてない。
どうしよう、彼の生きている証が見つからない。

すがるように彼の暖かさを求めた。だが、

たいをなぞって。

彼の死を認識した。