アメディストス/エレフセウス

その日も、美しい満月だった。

水面に映る満月を、アメディストスは静かに見つめていた。
幼い頃、まだ母も父もミーシャもいて、幸せだった頃。
ミーシャの手には届かなかった水月を、いつかプレゼントしてあげようと、
ずっと思っていたのに。
ミーシャは逝ってしまった。

『ずっと一緒にいようね、エレフ!』
『うん、ミーシャ!ずっと一緒にいよう!』

小さな石を手に取り、水面に投げ入れれば水月が揺らめいた。
波紋がおさまると、水月は元の丸い形を取り戻す。

風が吹き、雲を流して月を覆い隠した。
同時に水面に映っていた水月も消え失せる。
代わりに映っていたのは―――

「…消えろ」
水底から見つめてくる紫色の瞳に、アメディストスは言い放った。
その言葉に、見つめてきた瞳は微かに笑ったようだった。

「将軍!」
突然かけられた言葉にびっくりし、慌ててアメディストスが振り返ると、部下のオルフェウスがこちらへ走ってくる所だった。
「将軍、突然いなくなられては困ります。皆が心配していますから、早くお戻り下さい」
あなたは我らの英雄なのです―と続けられたオルフェウスの言葉に、アメディストスは小さく苦笑いした。
私はそんな英雄なんて大層な者ではないのに。
「分かった、オルフ。悪かったな、勝手にいなくなって」
「いえ、将軍も人ですから、一人になりたい時もあるでしょう。ですが、一言言って下さればよかったのです」
はぁ、と一息ため息をついたオルフェウスは、顔が苦労人の顔をしていた。
そんなオルフェウスを見てアメディストスはふっと微笑み、ふとオルフェウスの後ろを見た。
「……!!」
「…?どうなされました、将軍?」
「いや…、何でもない」
黒き影。死すべき者達がいつか背負う影。
彼はまだ若い。自分たちは戦っているのだから、いつ誰が死んでもおかしくはない。
だが、自分に近しい者が死んでいくのは、もう耐えられないのだ。

「オルフ…もう少し一人にさせてくれないか。皆には私がここにいると伝えておいてくれ」
「はぁ…しかし…」
何か言いかけたオルフェウスは少々モゴモゴし、頭を振って答えた。
「…はい、分かりました。ですが早めに戻ってきてください」
「分かっている」
オルフェウスが去ると、アメディストスはもう一度水面を見つめた。
未だに月は雲に隠されたままだ。
「ミーシャ…。何故、先に逝ったんだ…」
あの約束を果たさずに。
「ずっと一緒にいようって…言ったじゃないか…」
幼いエレフセウスが戻ってくる。泣き虫だったエレフセウスが。
お転婆で、水月を手に取ろうと一生懸命に手を伸ばしていたアルテミシアと交わした約束は果たされずに、今も水月は水面に揺らめく。

『彼ハ、Θノ器』
μとΦを側に連れて、冥王はアメディストス…エレフセウスを眺めていた。
『生キル事ハ辛ィ。母上ハ死セル者達ニ苦シミシカ与エナィ』
彼もまた、運命の女神に苦しみを与えられた者。
『エレフ…我等ハ、殺メ続ケル事デ救ィ続ケル』
ダカラ、ォ前ハ、我ノ器トナルノダ
苦シミシカ与エヌ我等ノ母ニ抗ィ続ケルノダ

気が済むまで泣き、泣いて赤く腫れた目を冷水で洗って元に戻してから、アメディストスはオルフェウス達の待つ拠点へと戻った。
最後に振り返って水面を見れば、やはり紫色の瞳がこちらを見ていた。

後書き
訳わかめすぎますね、分かります。
何が書きたかったんだ自分…!!
なんというか、冥王様とエレフを絡ませたかったのにどちらかというとオルフの方が絡んでますね、なんだこれ。
下書きなしで今考えて書いたものなんでぐっだぐだです。
あ、ちなみに私はラフレンツェオルフ=Moiraオルフ派です。

オルフはものすごくエレフというかアメディストスを崇拝してるといいよ!
んで、エレフが黒エレフになったのは冥王様になったからだってどっかで知って
それで冥府の扉開けに行ったんだって信じるよ!(←
エウリディケ?スルーの方向で。だって考察じゃなくて妄想だし。
by氷紅

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