「今日はザックスが昼食作ってくれるんだって!」
「「は?」」
Let's cook Touch me!
神羅カンパニー、ソルジャー寮にて。
レンガのある意味爆弾発言に、セフィロスとクラウドは固まった。
…あの生活力の欠片もないザックスが、料理?
「なんかねぇ、自慢のゴンガガ料理だって言ってたよ」
ザックスのゴンガガ料理。思い当たる節があったクラウドは真っ青になり、頭を抱えてうずくまった。
「アレなのか…!アレをまた食べさせられるのか…!!」
「どうした、クラウド?」
セフィロスに心配そうに声を掛けられ、クラウドはのろのろと顔を上げた。
顔色は真っ青を通り越して真っ白である。
「昔…っていってもちょっと前ですけど、ザックスがそのゴンガガ料理を振る舞ってくれたんです」
銀色兄弟はクラウドの話にじっと耳を傾ける。
クラウドはその当時の事を思い出したのか、顔からさらに生気が無くなっていく。もはや見た目は死にかけ状態だ。
「それが…緑色の煮物らしきもので…」
銀色兄弟はクラウドほどではないものの、顔色を悪くしてへたりこんだ。
どこをどうやったら煮物が緑色になるのか。
「ザックス曰く、『ゴンガガ名物、タッチミーの煮付けだ!』って…」
二人はもう苦笑いしかできなかった。
よく食べる気になったな、ゴンガガ村民よ。
「食べ始めた人を尊敬するね、それ…」
「というか、尊敬どころか軽蔑するぞ、俺は。どこの世界にモンスターを料理して食う人種がいるんだ」
「ゴンガガ村民はその人種らしいですね…」
確かに、カエルを食べる習慣のあるところは噂では聞いたことがあるが、カエル型をしていてもタッチミーはモンスターである。
なにせパンチで相手をカエルに変えられるのである。
「食べたくないよ…全力で」
「味はどうだったんだ?…あまり聞きたくはないが」
セフィロスはクラウドにそっと聞いた。
「えっと…どう形容したらいいのか…」
つまり、形容しがたい味と言うことか。
「タッチミーが丸ごと入ってるのか…?」
「はい、一匹まるまる…。」
想像したくない。それは本能が想像することを拒絶する状態だ。
緑色の汁に浸っているタッチミー。
考えるだけで恐ろしい。
「それ、食べなきゃかな…?」
「食べなきゃ…だと思います」
「それが昼食だと…?恐ろしい」
ゴンガガ料理を食べることを承諾してきたレンガは頭を抱えて座り込んだ。
「全力で断っておけば良かった…!!よく考えなくてもわかるじゃん!普段アンジールや僕に生活を頼って生きてる人にまともな食事が作れるわけ無いって、兄さん見ればわかるじゃん…!!」
「ちょっ、レンガ、ザックスと一緒にされるのはさすがの俺も聞き捨てならないぞ!?」
「料理スキルで言ったら同レベルだよ!兄さん火使わなくても、消し炭しか作れないじゃんか!」
この会話でクラウドは想像してしまった。エプロンを着けてキッチン台に立つセフィr「(認めない…!!俺はそんなセフィロス英雄だなんて認めない…!!)」
自分で自分の想像を否定した。夢がマッハの勢いで崩れる。
まぁ、実際に会って話してみた時点で、クラウドのセフィロスに対する夢はそれこそ光速で崩れているのだが。
「レンガ~!あ、クラウドとセフィロスも一緒だったのか。丁度いい!昼食出来たぜ!」
出た諸悪の根源。
ザックスの笑顔が憎たらしい。
「…じゃあ、ごちそうになるよ。クラウドも。…あ、兄さん、逃げようとしたら前髪潰すよ」
逃げようとしていたセフィロスはぴたりと止まり、すごすごとレンガの後ろへ付いていった。
「ほいっ!これが俺の自慢料理!『タッチミーの煮付け』だ!」
やっぱりか…と心の中で3人は盛大に落ち込んだ。
クラウドの言ったとおり、鮮やかな深緑色をしている。皿の真ん中に、グロくひっくり返ったタッチミーがぷかぷかと浮かんでいた。
「味見したから、見た目はこんなだけど味はばっちりだ!」
そのザックスのセリフに少しだけ安心したセフィロスは、スープを一口分だけ口に運んでみた。
「だっ、ダメですセフィロスさっ…!!」
クラウドの静止も間に合わず、セフィロスはそのスープを口にしてしまった。
「…………――――――っっっっっ!!!!!?????」
無言のまま、セフィロスはザックスの部屋のドアを蹴破り、どこかへと走り去ってしまった。
恐らく、行き先はトイレだろう。
「「………(真っ青)」」
どうやらタッチミーの煮付けは以前よりパワーアップしたようだ。一瞬で英雄を葬るこのパワー。
…実はアルテマウェポンより強いんじゃないだろうか。
「どうしたんだぁ?セフィロスの奴。美味いのに」
不思議そうな顔をして煮付けを食べすすめていくザックスを、二人は恐ろしげな顔で見つめていた。
こいつの胃袋は最凶だ。
「(…でも、兄さん偏食だからなぁ…。食べてみないと分かんないよ)」
「(いや、前回のはとてもとても食えたもんじゃなかったんです)」
と、ヒソヒソとどうやって煮付けを回避するか二人は思案していた。
「どうした?食わないのか?」
「あ、ゴメン、食べる食べる」
「(レンガさぁぁぁぁん!!泣)」
「(ごっ、ごめん、つい!)」
クラウドは軽く涙目だ。食べると答えたからには食べなくてはならない。
意を決し、レンガはスプーンで深緑色のスープとタッチミーの身を少しだけすくいとり、食べた。
「(…大丈夫かな…)ど、どうですか?」
「…う」
「う?」
「美味しい!おいしいよ、コレ」
「だろー?みんな気味悪がって食べてくれないんだよなぁ」
意外だ。
レンガはまさかのタッチミーの煮付けをお気に召したようだ。今はぱくぱくと順調に食べている。
「うん、美味しいね。ゴンガガ料理食べたい時だけザックスに頼もうかな」
「おう、任せとけ!」
二度とそんな機会はあって欲しくないと思う。切実に。
レンガが美味しいと言ったので、クラウドも少々安心し、スープを口に運んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」
…一瞬でクラウドもトイレに駆け込むハメになった。
「…クラウドもどうしたんだ?」
「さぁ…?」
最凶胃袋の二人は首を傾げていた。
後日聞いたところによると、その日は夕方までトイレで吐く英雄とチョコボな一般兵の姿が見られたそうだ。
後書き
ザックスの料理はロクなもんじゃないと思います。
しかもタッチミーの煮付けとかそんなグロい物を最初に食べ始めたセフィロスの勇気がすごいと思います。
自分で書いといてなんだコレ。
by氷紅
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